【会員の広場『希望』】第109号 4/8

2021.12.20
第109号 4/8



近くのスーパーに感謝
藤谷 順子
現在私が住んでいる家の近所には、徒歩5分圏内にJRの駅やバス停、ゆうちょ銀行、スーパーマーケット、ドラッグストアなどがあり、不便な事はなく快適に生活ができています。ここに住んで二十数年がいつの間にか経っています。
一人暮らしを始めた頃は、炊飯器でお米を1、2合毎日炊いて、ふりかけご飯や卵かけご飯をして食べたり、電子レンジにトースター機能があり、7分かけて食パン2枚を焼いて食べていたり、おかずは野菜炒め、目玉焼き、肉じゃが、カレーを作ったり、焼き豚を焼いたり、キャベツやレタスを手でちぎってツナを入れて、ドレッシングをかけて野菜サラダにしたり、うどんやラーメンなど簡単にできる料理を作っていた事を思い出しました。
月日が経ち、1年後には初めの意気込みはどこへ…。いつの間にかスーパーやコンビニのお弁当や、惣菜、冷凍食品、レトルト食品、カップ麺などを食べるようになって全然自炊しなくなっていました。
食事は近くのスーパーやコンビニがあるから、料理するのではなく、買って来て電子レンジで温めて食べていました。何も思わずスーパーにあるお惣菜を買って、ストレスもたまっていたのか、半額だと嬉しくて2人前ぐらい平気で買って、ぺろりと食べていました。便利だなぁと感じていました。
3年前に、病気がきっかけで「食べ物をバランス良くどう調理して食べるかが大切だな」と改めて考えさせられました。その後、毎日魚を焼いたり、煮物やサラダを作ったり、豆腐を食べたり、食べられる物を作って食べていました。
そして去年の年末に「近くのスーパーが改装で半年くらい閉店する」と聞いてびっくり。お米、卵、野菜、魚、肉など、どこで買おうかなと真剣に考えている間に、すぐ閉店になってしまいました。
まずは魚をどうやって食べようかと思い、インターネットで鯖の水煮缶詰が、なぜかタイミング良く安く売っていたので買いました。
個数を間違えたのか、今となってはわからないけど、2箱が一塊で送られてきました。1箱、24缶入なので、2箱で48缶送られてきました。数が多くても、半年間あれば食べるし、缶詰は重いから良かったと思いました。次に、野菜、肉はどうしようと思っていたが、帰り道に緑井のフジ、天満屋、川内のダイキ産直市で買うことに決めました。知らない店での買い物は、どこに何があるか分からないから、店内をうろうろ探しまわって時間がかかりました。欲しい物ではなく、他の物を買っていたことも、度々ありました。
季節は夏になり、「さてそろそろかな」と思い、口田南のスーパーの店員さんに聞いてみると「まだまだなんよ」と返事がありました。まあ改装だからと思っていたら、建物を壊している事が分かり、改装ではなく建て替えだから工事が長引くんだなと納得しました。
お米は、あきろまん4kgをダイキで買って、「筋トレだなぁ」と思い、ヘトヘトになりながら歩いて持って帰っていました。飲み物、炭酸飲料、牛乳、ヨーグルト、スイーツなどは、重たいので買いませんでした。
そして秋になり、近所のスーパーマーケットの前を何気に歩いていたら、垂れ幕が…「11月18日(木)開店」と書いてありました。垂れ幕を見てから待ち遠しくて、毎日わくわくしていました。
開店当日は仕事でしたが、夜に早速買い物に行きました。中に入るなり、広くて明るくて、快適だなと思いました。また新たに商品の位置を覚えるのが大変だけど、食べる物はだいたい決まっているので、大まかに覚えていけば良いなと思っています。最近は嬉しくて、毎日買い物に行くようになりました。
そんなこんなで、10ヶ月も買い物にすごく苦労したので、普通に欲しいものがいつでも買える事は、とても嬉しくて幸せです。ここに住めている事や、スーパーが本当に近くにある事で生活できている事に、感謝しています。

【会員の広場『希望』】第109号 5/8

2021.12.20
第109号 5/8


俳句                 
森下 照彦
紅花を 白き摘む指 血に染まり 
雷鳴に 覆う細き手 隙間から 
轟音(ごうおん)の 滝の向こうに 青峰かな 
梅雨明けて 小さな胸を 撫で下ろし 
梅雨入りて 被害無きにと 胸痛め 
蝉減りて 虫鳴く夜長 季節見る 
コオロギの 急ぐ鳴き声 秋の宵 
松虫を 今宵も耳に 膝枕 
暁に カラス家路に 染まり飛ぶ 
自然界 掃除機成るや 野分かな 
紅梅も 雪に包まれ 白梅に 
風花や 鼻に溶けたる 何処から 
雪かぶり 映える真紅の 寒椿 
達磨型 服着てだるま 雪ダルマ 
雪不足 農家困りし 田植えかな 

短歌              
                     森下 照彦

目覚まして 水冷たきを 顔に知り 季節変わりて 食欲の秋
朝目覚め 冷水顔に 気持ちよく 季節感じる 今日も張りけり
微風に 繊細な美を やや揺らし 鮮やか芙蓉 淑やかに咲く 
淑やかに 芙蓉咲きたる 通勤路 見送り招く 元気倍増  
名月に 供え物より 飲む酒を 鳴く虫友に 今宵楽しむ
蒜山に 放牧されし ホルスタイン 日差しを浴びて 健康な乳  
霜降りの 松坂牛は ビール飲み 俺は発泡酒で 乾杯する  


川柳                    
美野 洋子

掃除すみ 虎の置物 除夜の鐘
寅年に 入学祝う のし袋
初詣 おみくじ引いて 運だめし
初節句 成長を願う ひな飾り
宍道湖に 今年も来たよ 湖(こ)白鳥(はくちょう)
電車内 昔小説 今スマホ
避難勧告 命を守る お声かけ
デパ地下で 思わず呼ぶと 人違い
山のこだま ヤッホーと呼べば 繰り返す
薬でも 恋の病は 直せない
早く欲しい コロナの薬 待ち遠しい
妻の足 かばう夫は 古希の杖

【会員の広場『希望』】第109号 6/8

2021.12.20
第109号 6/8


わたしとiPhone
米田かおり
わたしがiPhoneを使うようになって、もうすぐ5年が経とうとしています。iPhoneを買うにあたっては、当時すごく悩んだことを今でも覚えています。なぜかと言うと、iPhoneにはほとんどボタンはなく、画面を指でタッチしたりスライドするなどして、操作を行わないといけないのだということを聞いていたからでした。不器用なわたしが、上手に指を動かして操作できるとは思えなかったので、操作ミスで間違い電話をかけてしまったり、必要のない物を間違えて買ってしまったら大変だなあと思っていたのでした。
そんな時、視障協で、iPhoneの体験会があることを知り、参加してみることにしました。そこではまず、iPhoneにはボイスオーバーと言う、視覚障害者が使いやすくするために考えられたモードがあり、それをオンにすることで、画面上の文字を読み上げてくれるようになったり、操作面でも、普通のモードでは1回画面にタッチすれば有効になるところを、このモードでは2回タッチしないと有効にならないので、間違えがおこりにくいように工夫されていることを知りました。次に、実際にiPhoneを使って、どのように指を動かすのかや、文字入力の方法などを教えていただきました。予想していた通り、操作はやはり、わたしにはなかなか難しいもので、これはかなり練習が必要だなあと感じました。最後に、実際にiPhoneを使って良かったことや、視覚障害者が使うと便利なアプリなども紹介していただき、大変そうだけど使えるようになったらすごく楽しそうだなあと思うようになりました。
講師の方に、「わたしでも使えるようになりますかねえ?操作ミスをしそうで不安なんですけど。」と相談すると、「それならまずは、iPod touchを購入して、指を動かすタッチ操作の練習をして、慣れてきたら、iPhoneを購入してはどうですか?」とアドバイスをしてくださいました。iPod touchは、簡単に説明すると、iPhoneの電話機能の付いていない物とのことで、家にWi-Fiがあれば使えるとのことだったので、わたしは、さっそく購入しました。指を動かすジェスチャー練習は、『使い方教室』というアプリを紹介していただき、時間の空いた時には、何度も練習をしました。
はじめは、どうなることかと思っていましたが、そのうち指の動かし方のこつが掴めてきて、文字入力もゆっくりですができるようになっていきました。これならなんとかなりそうと、ついにiPhoneを購入し、使い始めることができたのです。はじめのうちは、メールやラインをしたり、通話をするので精一杯でしたが、今ではニュースを読んだり、わからない言葉や漢字を調べたり、音楽やラジオを聴いたり、外食をする前には、そのお店のメニューを調べたりと、いろんなことができるようになりました。操作で分からないことがあった時には、使っている友達や、先輩に訪ねると、丁寧に教えてくださったことも、とてもありがたかったです。まだ使ってみたいアプリがたくさんあるので、これからも楽しみです。
今、iPhoneを購入しようかどうか悩んでおられる方がいらっしゃったら、ぜひ思い切ってチャレンジしてみてください。きっと、楽しいことが増えたり、生活が便利になりますよ。

【会員の広場『希望』】第109号 7/8

2021.12.20
第109号 7/8

小学校での講話はびっくり!ドッキリ!
清水和行
 私は時々小学校から講話を頼まれることがあります。ほとんどが社会福祉協議会の「やさしさ発見プログラム事業」によるものです。この事業は学校や地域、団体、企業等で行なわれる福祉教育を、生涯学習の位置づけとして実施しているものです。ネットで調べたら合言葉は「体験!発見!!ほっとけん!!!」だそうです。ちょっと「おしい!広島市社協」かな?
 私が講話する学年は、ほとんどが小学三年生です。一昨年まで三年生の国語の教科書(東京書籍)に「もうどう犬の訓練」という教材があったからだと思います。教科書が変わった今でも、三年生の総合的な学習の時間などを使って、私のような盲導犬使用者を講師として招聘していただいているのです。
 担任の先生からは、「盲導犬のことについて話してください」というリクエスト。もちろん盲導犬については、実演を交えてしっかりお話します。盲導犬の理解が進むことは、私たち盲導犬ユーザーにとって何よりありがたいことですから。しかし、それだけで終ったのでは大変もったいないことです。白杖や手引きについても、実演を交えて、これもしっかりお話します。私が本当に理解してほしいのは、盲導犬というよりも、むしろ目の見えない、見えにくい人に対する理解ですから。
 この辺りから子供たちの反応がおもしろくなってきます。「みんなが目が見えなかったら、盲導犬と白杖と手引きとどれが良い?」と子供たちに尋ねます。一番人気はダントツで盲導犬。白杖や手引きは数えるほどです。白杖よりも盲導犬の方が安全性で優れているので、白杖が少ないのは予想できます。しかし、手引きが少ないのは、なんとも不思議な結果です。第一、私を上手にステージ上まで手引きしてくださった担任の先生に申しわけありません。盲導犬が、「カム」と命令したら私のところへ来るだけで拍手が起こるのに。(笑)盲導犬のスーパードッグバイアスがかかっているのでしょうね。
ここでお話が終っては、私が講話した意味がありません。盲導犬にはできないことが手引きの人にはなんと簡単にできてしまうことか。盲導犬は会話できないし、文字も読めないし、信号機の色さえ分からないのです。冷静に考えれば人による手引きの方が圧倒的に優れているのです。盲導犬が手引きより優れていることは、24時間いつでも私の傍にいて、いつでもお出かけに付き合ってくれることです。そして、口が堅いこと。私の行動を決して妻には告げ口しませんから。(笑)
私は盲導犬のお話をしながら、さりげなく残り時間を告げたり、コップにお茶をついで飲んだり、白杖で歩きながら杖で触れたものの音について解説したりします。盲導犬に餌や水を与えたり、排泄物の処理をしたり、シャンプーや歯磨きをしたり、遊んであげたりと、白杖使用者では必要ない盲導犬のお世話をしていることも話します。「盲導犬ができることは限られているみたいだし、でも、このオジサンは、なんかいろいろなことをしているようだし、毎日どうやって生活しているんだろう?」なんてことを子供たちに考えてもらえれば、私のお話の意味があるというものです。
 いよいよ最後の質問コーナー。子供たちからいろいろな質問が飛び出します。盲導犬についての質問はもちろんあります。でも、どっきり!びっくり!の質問は、盲導犬以外のこと。
「おじさんは、どうやってお風呂に入るのですか?」という質問に、私は逆質問をします。「あなたは、どうやってお風呂に入るの?」「私は、一人で入ります。」「そうか。おじさんは、一人でお風呂に入らないと思ったんだね。おじさんは、一人でお風呂に入るよ。あなたは頭を洗うとき、頭の汚れを目で見て洗うかな?そんなこと、ないよね。体を洗うのに目はいらないんだよ。だから、おじさんの家では、おじさんは一人で入るんだ。でもね、温泉は一人で入れないかもしれないね。どこになにがあるか分からないからね。」
 他にもいろいろなびっくり!ドッキリ!の質問が飛び出します。「おじさんは、どうやって服を着るのですか?」「おじさんは、どうやってご飯を食べるのですか?」「おじさんは、どうやって買い物するのですか?」「おじさんは、なんで眼鏡をかけているのですか?」時には「おじさんは、どうやって車の運転をするのですか?」なんて質問もあります。「そうだね。今はできないけど、何年かしたら、おじさんの運転できる車ができるかもしれないね。あなたが大人になったら、作ってくれると嬉しいな。」なんて答えることもあります。このびっくり!ドッキリ!の質問タイムが一番楽しい時間です。担任の先生はどきどきのようですけど。(笑)「清水さん、失礼な質問があり、申しわけありませんでした。」「いえ、子供たちの質問で失礼なものは、これまで一度もありませんでしたよ。」本当にそう思います。
 今、日本テレビ系列の連続ドラマで「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」が放映されています。盲学校に通う弱視の女子高生が主人公のラブコメです。みなさんの中にもご覧になっている方も多いのではないでしょうか。ストーリーそのものも楽しいものですが、ドラマの中で、視覚障害者に対する理解を深めるための工夫がうまく組み込まれています。私もこのドラマのようにはいきませんが、盲導犬を入り口に、視覚障害者に対する理解を深めるための講話を、私のライフワークとしてこつこつがんばって行きたいと思います。この子供たちが20年後、30年後の日本を作ってくれるのですから。

【会員の広場『希望』】第109号 8/8

2021.12.20
第109号 8/8


編集後記
朝晩一段と寒くなり、早朝の気温が一桁台になってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスの状況も、どんどん変化してきており以前とは違う生活スタイルになってきました。
今回も皆様のご協力により、7名の方からご投稿いただき、会員の広場「希望」109号を発行する事が出来ました。
原稿を投稿された皆様、大変有難うございました。
視障協では、一年に一度どなたでも、ご意見・ご要望・体験談・詩・エッセイ等、どんな内容でも構いませんので、投稿をお待ちしております。宜しくお願い致します。
(視障協 文化部  藤谷順子)

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