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俳句                 
森下 照彦
紅花を 白き摘む指 血に染まり 
雷鳴に 覆う細き手 隙間から 
轟音(ごうおん)の 滝の向こうに 青峰かな 
梅雨明けて 小さな胸を 撫で下ろし 
梅雨入りて 被害無きにと 胸痛め 
蝉減りて 虫鳴く夜長 季節見る 
コオロギの 急ぐ鳴き声 秋の宵 
松虫を 今宵も耳に 膝枕 
暁に カラス家路に 染まり飛ぶ 
自然界 掃除機成るや 野分かな 
紅梅も 雪に包まれ 白梅に 
風花や 鼻に溶けたる 何処から 
雪かぶり 映える真紅の 寒椿 
達磨型 服着てだるま 雪ダルマ 
雪不足 農家困りし 田植えかな 

短歌              
                     森下 照彦

目覚まして 水冷たきを 顔に知り 季節変わりて 食欲の秋
朝目覚め 冷水顔に 気持ちよく 季節感じる 今日も張りけり
微風に 繊細な美を やや揺らし 鮮やか芙蓉 淑やかに咲く 
淑やかに 芙蓉咲きたる 通勤路 見送り招く 元気倍増  
名月に 供え物より 飲む酒を 鳴く虫友に 今宵楽しむ
蒜山に 放牧されし ホルスタイン 日差しを浴びて 健康な乳  
霜降りの 松坂牛は ビール飲み 俺は発泡酒で 乾杯する  


川柳                    
美野 洋子

掃除すみ 虎の置物 除夜の鐘
寅年に 入学祝う のし袋
初詣 おみくじ引いて 運だめし
初節句 成長を願う ひな飾り
宍道湖に 今年も来たよ 湖(こ)白鳥(はくちょう)
電車内 昔小説 今スマホ
避難勧告 命を守る お声かけ
デパ地下で 思わず呼ぶと 人違い
山のこだま ヤッホーと呼べば 繰り返す
薬でも 恋の病は 直せない
早く欲しい コロナの薬 待ち遠しい
妻の足 かばう夫は 古希の杖