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小学校での講話はびっくり!ドッキリ!
清水和行
 私は時々小学校から講話を頼まれることがあります。ほとんどが社会福祉協議会の「やさしさ発見プログラム事業」によるものです。この事業は学校や地域、団体、企業等で行なわれる福祉教育を、生涯学習の位置づけとして実施しているものです。ネットで調べたら合言葉は「体験!発見!!ほっとけん!!!」だそうです。ちょっと「おしい!広島市社協」かな?
 私が講話する学年は、ほとんどが小学三年生です。一昨年まで三年生の国語の教科書(東京書籍)に「もうどう犬の訓練」という教材があったからだと思います。教科書が変わった今でも、三年生の総合的な学習の時間などを使って、私のような盲導犬使用者を講師として招聘していただいているのです。
 担任の先生からは、「盲導犬のことについて話してください」というリクエスト。もちろん盲導犬については、実演を交えてしっかりお話します。盲導犬の理解が進むことは、私たち盲導犬ユーザーにとって何よりありがたいことですから。しかし、それだけで終ったのでは大変もったいないことです。白杖や手引きについても、実演を交えて、これもしっかりお話します。私が本当に理解してほしいのは、盲導犬というよりも、むしろ目の見えない、見えにくい人に対する理解ですから。
 この辺りから子供たちの反応がおもしろくなってきます。「みんなが目が見えなかったら、盲導犬と白杖と手引きとどれが良い?」と子供たちに尋ねます。一番人気はダントツで盲導犬。白杖や手引きは数えるほどです。白杖よりも盲導犬の方が安全性で優れているので、白杖が少ないのは予想できます。しかし、手引きが少ないのは、なんとも不思議な結果です。第一、私を上手にステージ上まで手引きしてくださった担任の先生に申しわけありません。盲導犬が、「カム」と命令したら私のところへ来るだけで拍手が起こるのに。(笑)盲導犬のスーパードッグバイアスがかかっているのでしょうね。
ここでお話が終っては、私が講話した意味がありません。盲導犬にはできないことが手引きの人にはなんと簡単にできてしまうことか。盲導犬は会話できないし、文字も読めないし、信号機の色さえ分からないのです。冷静に考えれば人による手引きの方が圧倒的に優れているのです。盲導犬が手引きより優れていることは、24時間いつでも私の傍にいて、いつでもお出かけに付き合ってくれることです。そして、口が堅いこと。私の行動を決して妻には告げ口しませんから。(笑)
私は盲導犬のお話をしながら、さりげなく残り時間を告げたり、コップにお茶をついで飲んだり、白杖で歩きながら杖で触れたものの音について解説したりします。盲導犬に餌や水を与えたり、排泄物の処理をしたり、シャンプーや歯磨きをしたり、遊んであげたりと、白杖使用者では必要ない盲導犬のお世話をしていることも話します。「盲導犬ができることは限られているみたいだし、でも、このオジサンは、なんかいろいろなことをしているようだし、毎日どうやって生活しているんだろう?」なんてことを子供たちに考えてもらえれば、私のお話の意味があるというものです。
 いよいよ最後の質問コーナー。子供たちからいろいろな質問が飛び出します。盲導犬についての質問はもちろんあります。でも、どっきり!びっくり!の質問は、盲導犬以外のこと。
「おじさんは、どうやってお風呂に入るのですか?」という質問に、私は逆質問をします。「あなたは、どうやってお風呂に入るの?」「私は、一人で入ります。」「そうか。おじさんは、一人でお風呂に入らないと思ったんだね。おじさんは、一人でお風呂に入るよ。あなたは頭を洗うとき、頭の汚れを目で見て洗うかな?そんなこと、ないよね。体を洗うのに目はいらないんだよ。だから、おじさんの家では、おじさんは一人で入るんだ。でもね、温泉は一人で入れないかもしれないね。どこになにがあるか分からないからね。」
 他にもいろいろなびっくり!ドッキリ!の質問が飛び出します。「おじさんは、どうやって服を着るのですか?」「おじさんは、どうやってご飯を食べるのですか?」「おじさんは、どうやって買い物するのですか?」「おじさんは、なんで眼鏡をかけているのですか?」時には「おじさんは、どうやって車の運転をするのですか?」なんて質問もあります。「そうだね。今はできないけど、何年かしたら、おじさんの運転できる車ができるかもしれないね。あなたが大人になったら、作ってくれると嬉しいな。」なんて答えることもあります。このびっくり!ドッキリ!の質問タイムが一番楽しい時間です。担任の先生はどきどきのようですけど。(笑)「清水さん、失礼な質問があり、申しわけありませんでした。」「いえ、子供たちの質問で失礼なものは、これまで一度もありませんでしたよ。」本当にそう思います。
 今、日本テレビ系列の連続ドラマで「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」が放映されています。盲学校に通う弱視の女子高生が主人公のラブコメです。みなさんの中にもご覧になっている方も多いのではないでしょうか。ストーリーそのものも楽しいものですが、ドラマの中で、視覚障害者に対する理解を深めるための工夫がうまく組み込まれています。私もこのドラマのようにはいきませんが、盲導犬を入り口に、視覚障害者に対する理解を深めるための講話を、私のライフワークとしてこつこつがんばって行きたいと思います。この子供たちが20年後、30年後の日本を作ってくれるのですから。