俳句(冬季)             


森下 照彦
酔(よ)いつぶれ また除夜(じょや)の鐘(かね) 聴(き)きそびれ
冬将軍(ふゆしょうぐん) 新年から 大(おお)暴(あば)れ
床の間に 長寿(ちょうじゅ)願いて 万(お)年(も)青(と)鉢(ばち)
母の愛 正月(しょうがつ)飾り(かざり) 万(お)年(も)青(と)かな
梅かおる 澄んだ心に 染み入(しみい)りて
寒(かん)葵(あおい) 落ち葉に埋もれ 顔を出し
七草の 胃を休ませる 繁縷(はこべ)かな
冬の空 常磐(ときわ)小桜(こざくら) 鮮(あざ)やかに
豪雪(ごうせつ)に 列島(れっとう)マヒし コタツかな
寒空(さむぞら)を 染める桃色 寒(かん)桜(ざくら)

俳句(春季)
春待(はるま)ちて 穏(おだ)やか可憐(かれん) オンシジュウム
豌豆(えんどう)の 春の匂(にお)いや 豆ご飯
スイトピー 紋白蝶(もんしろちょう)と 春を呼ぶ
春を呼ぶ 畑(はたけ)一面(いちめん) 花(はな)菜(な)かな
春の空 光輝(こうき)広がる 節分(せつぶん)草(そう)
恵方巻(えほうまき) 幸福(こうふく)招(まね)く 丸かじり
節分に 鬼より怖(こわ)い コロナかな
節分に 待ってましたと 薺(なずな)さく
立春(りっしゅん)に 草木は芽吹(めぶ)く コロナ禍(か)で
八朔(はっさく)を 一番(いちばん)好(この)み 春を待つ

俳句(夏季)
梅雨明(つゆあ)けを 確かと認め 蝉(せみ)の声
マイペース 小鳥と話す 夏の山
又(また)豪雨(ごうう) 災害残し 立ち去りぬ
梅雨(つゆ)明(あ)けて 同時に唄(うた)う 蝉(せみ)しぐれ
線状降水帯 蝉可哀(せみかわい)そう
梅雨明けて 粋(いき)なり猛暑(もうしょ) 耐えきれぬ
名も知らぬ 滝(たき)壺(つぼ)うえの 水(みず)おちる
滝(たき)壺(つぼ)に 飛び込みたいや 酷暑(こくしょ)かな
奥の滝 鹿のみ覗(のぞ)く 裸浴(はだかよく)
無観客(むかんきゃく) 東京五輪 コロナ増し
俳句(秋季)
猛暑(もうしょ)さけ 夜の散歩に虫の声
変わり行く 朝の散歩(さんぽ)路(じ) 秋(あき)香(かお)る
秋の風 爽(さわ)やか過ぎし 香りかな
一夜にて 野に沸き遊(わきあそ)ぶ 赤トンボ
爽やかな 赤トンボ舞(ま)う 秋の空
朝(あさ)散歩(さんぽ) 秋を感(かん)ずる 腹の虫
秋風に 焼き肉におい 導(みちび)かれ
青い空 群(む)れて左右に 赤トンボ
野に遊ぶ 童(わらべ)駈けだす 秋まつり
妖艶(ようえん)な 闇に香りを 夜(よる)顔(がお)や

川柳
コロナ禍で 後期(こうき)高齢(こうれい) 足弱(あしよわ)り
入社後 3年マスク 顔(かお)知(し)らず
イライラと 在宅勤務 太り過ぎ
通勤に 無言の電車 皆マスク
帰宅途中 マスク跳ね上(はねあ)げ 一気(いっき)酒(ざけ)  
良く転ぶ 曾孫(ひまご)に歳(とし)を やろうかな
物価は 鰻(ウナギ)登(のぼ)りで 年金(ねんきん)減(へ)り
コロナ禍で 儲ける(もうける)奴(やつ)は 公務員
大雨が 降るビールなら 溢(あふ)れずに

短歌
渓流(けいりゅう)に 皐月(さつき)躑躅(つつじ)の 美しさ 貴女(あなた)と見たい 静かなる森
薔薇(ばら)園(えん)に 貴女(あなた)と同じ 香り立つ 今も秘めたる 心に花を
狭き(せまき)腹(はら) 十月(とつき)を過ごし 世にいでし 健やか育て 杏(あん)珠(ず)の人生
初夏の陽(ひ)を 浴びて誕生 卯の花も 香る垣根に ホトトギス来る
微風(そよかぜ)に 早苗(さなえ)の水面(みなも) ツバメ影 低く飛びたる 食事の時間
梔子(くちなし)の 香り包まれ 嫁ぐ孫 今は淑(しと)やか 昔お転婆(てんば)
猛暑なり ようやく聞こえ 鈴虫の 心(こころ)満(み)たされ コロナは今も
古(いにしえ)の 今も崩(くず)れぬ 石垣の 下(した)で語った 神代(かみよ)の恋を
闇(やみ)の空(そら) 仄(ほの)かに残る 月食(げっしょく)の 時(とき)達中(たつなか)に 光増(ひかりま)したる
正月に 曾孫(ひまご)電話に 出てくれば アーアー言葉 年の始まり
正月に 美食(びしょく)食べすぎ 胃にもたれ 七草(ななくさ)粥(がゆ)の 有難(ありがた)さかな
梅(うめ)香(かお)り 空の明るさ 胸(むね)一杯(いっぱい) 生気(せいき)を吸い込み 成人(せいじん)門出(かどで)

川柳                    


美野 洋子
①  初詣(はつもうで) おみくじ結(むす)ぶ 老夫婦(ろうふうふ)
②  絵馬(えま)を書(か)く 後ろ(うしろ)姿(すがた)の 受験生(じゅけんせい)
③  卯(う)の年 増える(ふえる)家族(かぞく)の 母子(ぼし)手帳(てちょう)
④  春一番(はるいちばん) 帽子(ぼうし)ひらひら 蝶(ちょう)のよう
⑤  譲り合い(ゆずりあい) 笑顔(えがお)二つ(ふたつ) 電車内(でんしゃない)
⑥  カブトムシ 相撲(すもう)とらせて 遊(あそ)ぶ子(こ)ら
⑦  タンチョウの 求愛(きゅうあい)ダンス 癒(いや)される
⑧  逆(さか)上(あ)がり 出来て笑顔(えがお)の 孫娘(まごむすめ)
⑨  宮(みや)太鼓(たいこ) 夜空(よぞら)に響(ひび)き 赤子(あかご)泣(な)く
⑩  秋雨(あきさめ)に 色(いろ)とりどりの 傘(かさ)の花
⑪  雨上(あめあ)がり 渡(わた)ってみたい 虹(にじ)の橋(はし)
⑫  年末に 帰省娘(きせいむすめ)の 布団(ふとん)干(ほ)し